■another home
〈旅を語る人 no.20〉
村上潔
アナザー・ホーム。その言葉を見て瞬時に頭に浮かんだのは、町田ノイズのことだ。本当のところ、私の心のなかではもうホームと言っていい存在なのだけれど、実質としては違うから、やっぱりアナザーが正しい。
町田ノイズの開業が1980年。私が町田に住み始めたのが1979年。ほとんど同じタイミングで育ち始めた。私が初めてノイズに入ったのはおそらく1996年で、それ以来、私はノイズとともにある。2004年に京都に来て、随分と離れた存在になってしまったけれど、町田を想うとき真っ先に目に浮かぶのは、ノイズの薄暗い空間だった。
東京に行く用事があれば、何はなくともノイズに駆けつける。カウンターに座り、Aランチを食べ、アイスコーヒーを飲み、シフォンケーキを食べ、店長と話す。タイミングが合えばジャズライヴを楽しむ。とにかくあの空間に身を置きたい。においと味と音を吸収したい。その気持ちは、時が経つほど強くなる。
むらかみ・きよし
1976年、横浜市生まれ。町田市育ち。立命館大学生存学研究センター客員研究員。現代女性思想・運動史。
http://www.arsvi.com/w/mk02.htm
◇村上潔 2018 「[another home: 20]町田ノイズを想って」,writin' room編『New World Service』Vol.22(Apr. 2018),HiFi Cafe *2018年4月25日発行